「忘却の旋律」勝手サイドストーリーにして、アニメ版「シスター・プリンセス」勝手続編シリーズ『約束島』のWeb連載版、第6回目。
コピー誌で発行した部分は前回で使い果たしましたので(汗笑)、今回からは新規書き下ろし分(?)になります。
コピー誌で読んでいただいていた方には、「お待たせしました」な続きになりますね。
両作品がどんな感じでつながっていくか、書いている側としては引き続き試行錯誤ですが、まあ、つきあってやっていただければと。
それでは、どうぞ、、、
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「紅茶とコーヒー、どちらがお好みでぃすの?」
ふたつの内巻きロール髪の間に浮かぶクリクリした人なつっこい瞳と笑顔とに唐突に問いかけられ、ボッカは一瞬、思考が停止してしまう。
ただ単に自分の好みを答えればいい……ということは十二分に理解できているのだが、いま自分が巻き込まれている状況そのものに対して、まだ適応しきれていない。
居心地が悪いとか、そういうわけではなのだが………
「こ……紅茶を」と、それでもあわてて返答すると、少し見上げたとことろにある目の前の笑顔は、さらにそのにこやかさを増して………そして、手元のワゴンからティーポットを取り上げ、ボッカの前に置かれていたカップへと薄れた琥珀色の液体を注いでくれた。
カップから熱気とともに立ち上ってきた香りが彼の鼻腔をくすぐる。
紅茶がこんなに香り豊かなものだったとは………その意外な初体験の、率直な感想が思わず口に出てしまいそうになる。だがボッカはすんでのところで止めて、隣の席に座っている小夜子の顔をチラッと盗み見た。
見れば小夜子も自分と同じように紅茶を注文し、「ありがとう」と屈託のない笑顔で感謝の気持ちを伝えては………おそらくいま自分が見せたのと同じ軽いとまどいの表情を、その顔に浮かべている。
そのあまりの相似性に思わずクスリと笑ってしまったところを、めざとく小夜子に見とがめられて………ボッカはあわてて視線を周囲へと回し、ごまかした。
しかし………この席に腰掛けて以来数分の間に何度となく見回しているが、どうにも納得しがたい光景であり、状況であり………
ボッカと小夜子とが座っている席から円卓の向かって真っ正面には「兄」こと航が座っており、その隣には先ほど一番最後に遅れてやってきた眞深という髪を左右で一つずつ束ねた少女が座っていた。
そして彼らの左右にそれぞれ六人ずつ………先ほどまで小夜子とともにこのリビングにいた12人の少女たちが円卓の自分たちの「定位置」と思われる席に腰掛けて、自分たちを取り巻いている。
当たり前のことではあるが………このウェルカムハウスという建物のこのリビング空間において、ボッカたちは「お客様」であった。そして、彼らと真っ正面に相対する唯一の男性………航という青年こそが、この場における主人であることは、本人も語っていたとおり、間違いない。
それはまだ理解の範囲内なのだが………
「なに、見とれてるのよ?」
すぐ隣から、ほかの人には聞こえないだろうほどの小ささで、ややトゲを含んだ小夜子の声が投げかけられる。
あわてて振り向き、否定しようとしたが………その行為自体に自信を持つことができず、ボッカはためらってしまった。
いつも一緒にいる小夜子はともかくとして、ほかに13人もの少女たちに一度に取り囲まれるという経験は、さすがにこれまでしたことがなく………
違和感に圧倒されるのと同時に、その華やかさに目を奪われてしまい………一人の年頃の少年として、まんざら悪い気分ではなかったのも、事実だったから。
「さて………」
先ほどまでこの場の全員に対して紅茶かコーヒーをサービスしてた内巻きロールの…妹の一人があらためて自分の席に腰掛けたのを見届けて、航はボッカと小夜子に向けて語りかけた。
「何から話せばいいのかな?」
問いかけられて、思わずお互い顔を見合わせてしまい………ともに途方に暮れた表情を見せあいながら、ボッカと小夜子は、また正面の航に向けて、視線をあわせる。
その場にいる自分たち以外………14人分の視線が一斉に集まってくるのをの感じて、意識するでもなく、ふたりあわせて縮こまってしまう。
航はことさらな笑みをその穏和そうな顔に浮かべて、そんな彼らをなんとかリラックスさせようと試みていた。
その隣では、眞深が小さなため息をついて、肘で彼のことを小さくこついている。
「そうだ………まずは、君たちが、なぜこのプロミストアイランドに来たのか?………だよね」
軽く咳払いしていう航に、ボッカと小夜子もうなずきかえして………その場の気まずさもなんとか解消された。
航の説明によれば………アイバーマシン「エランヴィタール号」ごと海に突っ込んでいったボッカと小夜子を救助して、この本土から少し離れたプロミストアイランドと呼ばれる島へと連れてきたのは、先ほど玄関でボッカを出迎えた可憐という三つ編みの少女らしい。
あのとき本土とこの島を結ぶ連絡船にたまたま乗船した彼女が、偶然、海に浮かんでいた彼らふたりを見つけ、船員たちの協力で海面から船上へと拾い上げて、そのままこの島へと搬送してきた………とのことだ。
意識不明だった彼らは、プロミストアイランドに着くやいなや可憐の連絡を受けた航の指示で、このウェルカムハウスへと運び込まれて………彼ら兄妹が暮らすこの離れの隣にある、客室がある本館へと運び込まれ、医者の診断を受けて、それぞれ別のベッドで安静状態にさせられていた。
そして、ほぼ丸一日眠り込んだあげく、数時間前に小夜子が先に目覚めて………さきほどボッカが目を覚まして、いまに至るというわけだ。
「あのとき、おふたりを見つけることができて、本当に幸運でした」
お医者様がいうには、あと数分遅れていたら、命が危ないくらい消耗していたらしいですし………と、続けて可憐がそのときのことを思い出しつつ、安堵の息を吐く。
ボッカと小夜子は、あわてて彼女に向けて頭を下げた。
可憐が見つけてくれなければ、いま自分たちはこの場にはいないどころか………あのまま文字通り、海の藻屑と化していたに違いない。
だから………航による説明を聞いた時に、ボッカと小夜子それぞれが胸の奥に何となく違和感を覚えていたのだが………ふたりは可憐の殊勝げな表情に、それをかぶせあわすことはなく、ひとまずそのまま無視してのけた。
「それで……その………」
とりあえず、自分たちがなぜ無事なのかは、なんとなく理解できたが………それでも、まだ不明なことが多すぎるように思える。
たとえば、そう………目の前に座っている少女たちが、なぜ航のことをこぞって「兄」と呼ぶのか、などなど………
「ここにいるみんなと、僕との関係のことかい?」
心に抱いていた質問を航に先読みされて、ボッカはおとなしく首を縦に振る。
「まあ、誰でも気になるところだからね………。この娘たちは、みんな、僕の実の妹たちだよ」
何度も言い慣れたことだとばかり、こともなげにいう航に対して、一瞬、隣に座っていた眞深が何か話しかけようとした。しかし………「眞深ちゃん」と、さきほど咲耶と呼ばれていた年長の少女に制せられて、そのまま口をつづんでしまう。
「このプロミストアイランドは、僕たちの親が投資して作ったレジャーランド 兼 総合学園都市なんだ。ただ、レジャーランドの方は設備を完成させたはいいけど、営業を開始することができなくてね。学園の運営と残ったレジャーランド施設の維持とを、僕が任せられている」
蕩々と語る航の言葉は………たしかにこの場の、彼をすべての主として認める雰囲気と整合しているように思える。
彼がこの島の実質的な支配者だというのであれば………彼の妹であるという可憐が自分たちを助け、手厚い看護を施すということも、決して難しくはない話だろう。それは自分たちふたりにとって、可憐のいうとおり、きわめて幸運なことなのかもしれないが………
「あの………なんで、レジャーランドの方は、営業開始することができなかったんですか?」
ボッカが自分のうちにある違和感がなんなのか究明しようとしているその傍らで、小夜子がたしかに気にはなるけどことの本質とは関係なさそうな………ことによっては、命の恩人である彼らに失礼ともなる質問をあけすけに投げかける。
航と……彼の13人の妹たちはしばらくの間、顔を見合わせ、そして………
「それは………戦争があったからね」
とだけ、航が答えた。
<< 続く >>









































































































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